ウナギ病魚から分離したE.tardaMZ8901株のゲノムDNAライブラリーをコスミドベクターSuperCos1および大腸菌XL1-Blueを用いて作製した。溶血素産生クローンはウサギ血液寒天平板上で選択した。次いで、ロ-コピー数ベクタープラスミドpSTU28およびpTWU228を用いてサブクローニングを行い塩基配列の決定を行った。溶血素産生クローンは約35kbのDNA断片を含んでおり、サブクローニングの結果、約7kbのDNA断片上に溶血素遺伝子が存在した〔ETH1〕。ETH1溶血素遺伝子の塩基配列について既知の溶血素遺伝子と比較したところ、Serratia marcescensおよびProteus mirabilisの溶血素遺伝子と約57および47%の相同性を示し、同一の祖先遺伝子から進化してきた遺伝子であると思われた。ETH1溶血素遺伝子の上流には、鉄により転写量が調節されるFur結合領域が存在し、本菌の溶血素が培地中の鉄の量により産生量が異なるとされる報告と一致した。また、S.marcescensおよびP.mirabilisの溶血素遺伝子の発現が、鉄の量によりにより制御されていることから、今回解析したEHT1は鉄の量により遺伝子の転写制御がされていると考えられた。ETH1の溶血素遺伝子の構造領域の上流には、タンパク質の分泌に関与している遺伝子と類似の遺伝子〔ETHR1〕が存在し、この領域を除くと溶血素は菌体外へ分泌されないことから、ETHR1はETH1の分泌に必須であることが明らかとなった。 DNAハイブリダイゼーションにより、各地で分離されたE.tardaでのETH1の存在を調べたところ、全ての菌株がETH1と相同性を示したことからETH1はE.tardaに広く存在していることが分かった。
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