年令構成を陽に考慮した放流と資源管理のモデルを用いて再生産関係の変動のもとでのさまざまな管理方策の管理効果について、コンピュータによるシミュレーションと数式処理を併用して検討した。シミュレーションにおいては、長命で内的自然増加率があまり大きくない資源としてマダイを、短命で内的自然増加率が大きい資源としてガザミを、それぞれ想定した設定で行った。 とくに、漁猟率を毎年一定に保つ方策のうち、再生産に関する情報を用いずに決定され、現実の資源管理の目標とされることが多い2つの方策(漁獲係数と加入量あたり漁獲量の関係の曲線が原点での10分の1の傾きを持つ漁獲係数に設定するF0.1方策および、加入量あたり漁獲量を最大化するFmax方策と)には注目し、その管理効果を特に詳しく評価した。 その結果、放流下では用いた再生産関係がBeverton-Holt型であるか、Ricker型であるかによらず、また内的自然増加率が大きいか小さいかによらず、Fmax方策もF0.1方策も長期間の平均漁獲量において、再生産関係の情報を利用した方策や、加入量に応じて漁獲量を変化させる方策と大きく遜色ない平均漁獲量をあげることなどが予想された。内的自然増加率が大きくない資源に放流が行われていない状況では、Fmax方策の平均漁獲量は必ずしも高くないことなどを考えると、放流によって資源管理が容易になることを示すものといえる。 上記は、放流種苗が天然性のものと同様の再生産を行う場合についての結果であるが、放流種苗が全く再生産に寄与しない場合には、放流下でもFmax方策は平均漁獲量においておとり、また天然の再生産を大きく減少させる可能性も示唆された。F0.1方策ではこのようなことがおこりにくいことなどを考えると、さまざまな不確実性のもとでは、Fmax方策よりF0.1方策を資源管理の基本とすることが望ましいことが示唆された。
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