研究概要 |
1、石川県美川町の加工場においてサンプリングを行い、各種ぬか漬け8試料を入手した。これらの試料にフグ毒を添加した後、25℃において1年間貯蔵した。経時的に生菌数測定を行い,フグ毒をマウス毒性試験法で測定した。なお、対照としてオートクレーブで滅菌したぬか漬けを準備し、並行して比較実験を行った。 貯蔵期間中、全ての試料はpH6未満であった。生菌数の変化は様々な傾向を示し、貯蔵1カ月後に10^7/gに達したもの、貯蔵3カ月後に10^7/gに達したもの、貯蔵6カ月後までほぼ10^6/g以上のものなどがあった。マウス毒性試験法では、試料により様々であったが毒量が低下する傾向が見られ、貯蔵開始時に8分程度の致死時間示した試料が、貯蔵6カ月後、1年後に致死時間30分を超過する現象が観察された。しかしながら、対照の滅菌ぬか漬けにおいてもほぼ同様な毒量の低下が観察された。 2、“フグ卵巣ぬか漬け"を直接フグ毒含有培地中に接種、培養し、培養前後の培地中の毒量を測定した。4種のぬか漬け試料を、フグ毒添加海水培地(緩衝液にてpHを約6.4に調整済)にそれぞれ接種し、約1カ月間培養後これら培地中のフグ毒量をマウス毒性試験試験法で定量した。培養終了後さらに2回継代培養を繰り返し、各々の培養前後の毒量を比較した。継代培養後の培地中の生菌数はそれぞれ10^6〜10^8/mlであったが、並行して培養した未接種培地中の毒量と比較したところ、培養液中のフグ毒量の差異は観察されなかった。 3、本年度の研究では、“フグ卵巣ぬか漬け"中のフグ毒分解微生物の探索を行った。しかし、滅菌ぬか漬け、非滅菌ぬか漬け共に毒量の減少が起こること、ぬか漬け試料をフグ毒含有培地に植菌しても、対照と比較して培地毒量に差異が観察されないことから“フグ卵巣ぬか漬け"におけるフグ毒滅毒機構として、微生物以外の因子の重要性が示唆される結果となった。
|