研究概要 |
農業振興地域に公共用地を確保する方法として土地利用秩序形成型圃場整備事業を実施するケースと単純な用地買収を行ったケースとの比較を通して事業に関わる農地の権利移転について評価を行う。土地利用秩序形成型圃場整備事業では公共用地の創出と合わせ事業区域内で換地が行われ、農地の集団化がはかられる。これに対して、後者の用地買収のケースについて代替農地取得のプロセスと圃場分散がどの程度進むか定量的に考察した。埼玉県入間市における圏央道用地の1988年から1992年までの5年間の用地買収を分析した。まず、用地買収された農家のうち代替地取得を行ったのはおよそ25%であった。代替地取得をした農家としない農家を比較すると、代替地を取得した農家の道路用地売却面積の平均は1,537m^2、道路用地を売却したものの代替地を取得しなかった農家の平均は757m^2とほぼ倍の差がある。これについては税金の控除額(5,000万円)の上限が要因となっている。 さて、代替農地を取得した農家48件について道路用地として売却した農地と新たに取得した代替農地の距離の増減について測定した。距離の増加したのは22件、減少したものは16件である。ただし、減少したもののうち従前の所有者と比較しても距離が減少しているのは7件、さらにそのうち農地面積の増加しているものは1件であった。道路用地の買収では周囲に拾い農業振興地域がある場合でも農地の分散、細分化が進んでいることが把握された。 農業振興地域に公共用地を確保する際には、土地利用秩序形成型圃場整備事業により非農用地を創設する方式の方が、農家の圃場分散を防止し、農地の集積を行う観点から優れていることが裏付けられた。
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