研究概要 |
1.研究目的 本研究は,農村の自然資源が地域の環境保全という点で重要な資源であるという観点から,農村の作物すなわち植生が地域の温度環境緩和に果たす役割の評価を目的とした. 2.研究方法 地表面における熱収支や温度環境を測定するために,イネ,水面,牧草,乾燥土壌の地表面サンプル(ポット)を用意し,各サンプルごとに放射温度,蒸発散量,蒸発量を測定した.観測期間中に3回,3〜4日間の集中観測を行い,これらの測定を1〜4時間ごとに行った.また,水田における全天・反射日射量,温度・湿度鉛直分布,水温,地中熱フラックス,風速(高度2m),放射温度(水田全体,イネ葉面,株面水面)などを測定した. 3.研究結果と得られた知見 水田の熱収支形成における植生の役割を評価するために,イネ植被と株間水面とにおける2層の熱収支を検討し,以下のことが明らかにできた.(1)イネ植被が十分に密でなかった時期には,潜熱フラックスの構成に水面の貢献が十分に大きかった,(2)それ以降,水田の熱収支形成における水面の貢献は縮小した.(3)盛んな蒸発散の原因と結果は,水田による熱の吸収であった.この現象には水面はほとんど関係せず,イネ植被が大きく貢献した. 次に,地表面の熱収支及び温度環境の形成に重要な要因である蒸発効率を実験的に算定した.その結果,蒸発効率は概して午前中に大きく午後に減少する傾向があり,曇天時や高湿度時には大きく,風速との逆相関が認められた.本研究によって,蒸発効率に影響する要因とその変動パターンの概要が明らかにされた.
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