軟X線によるステレオ撮影技術を用いることで、土壌中の管状間隙(孔隙)に関する三次元データ(孔隙径、位置、方向、分岐状況など)が得られる。これらのデータを用いてパイプラインネットワークの水理計算を応用することで、透水係数が求められる。そこで単一の供試土壌にて透水試験と軟X線撮影が可能となるように(定水位法および変水位法の双方が可能な)透水試験装置を新たに開発した。この装置は減圧飽和と透水試験を連続しておこなえ、既製のものより正確な飽和透水係数が得られる。この装置を用いて現在得られる成果は次のとおりである。 (1)同じ供試土壌から透水試験による透水係数と軟X線画像から計算される透水係数が得られるため、孔隙が土壌の透水性に及ぼす影響を厳密に評価できる。灰色低地土の水田土壌に本装置を適用したところ、計算値は試験値の3〜10倍という値を示した。その原因として、1.最小孔隙径が水分移動に大きく影響す点、2.画像中に見られる孔隙陰影のうち透水性に寄与しないものも含めて計算している点、3.供試土壌を採取し整形する際に目詰まりが生じている点が考えられ、これらの原因を究明する必要がある。 (2)灰色低地土の水田土壌に対して本装置を変水位法で適用し、水頭差と時間の関係を求めた。その結果、透水係数が10^<-4>のオーダーを境にして透水性のよい供試土壌のデータは水頭差は時間の指数関数であらわされるが、透水性が悪くなるとその関数から外れてしまうことがわかった。また、これらのデータをもとに動水勾配と透水係数の関係が求められる。先程と同様、透水性の良いものの透水係数は動水勾配の変化に対して一定であるが、透水性が悪くなるとべき関数であらわされることがわかった。今後、得られたデータを詳細に検討した後、孔隙中の水理状況を調べるための端緒とする。
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