研究概要 |
筋肉中のピリジノリン解析のために、まず、いくつかの筋肉内コラーゲン単離手法の比較検討を試みた。その結果、FujiiとMurota(1982)の生化学的抽出法を用いると精製度の高い筋肉内コラーゲンが高収率で得られたため、この方法に従って熟成4,7,10,14,21,28日目の19ヶ月齢ウシ胸最長筋から筋肉内コラーゲンを調製した。 各熟成期間で得られた筋肉内コラーゲンを酸加水分解し、Eyreら(1984)の方法に従ってHPLCで分析した。市販のピリジノリンを内部スタンダードとして用いたところ、13.5分程度でピリジノリンが溶出し、また各々の筋肉内コラーゲンのクロマト展開図でもピリジノリンの明らかなピークが認められた。本研究において、19ヶ月齢ウシ胸最長筋中のピリジノリン含量は0.22〜0.34mg/gコラーゲン,すなわち0.14〜0.22モル/モルコラーゲンであり、以前のいくつかの報告と同様の値となった。一方、食肉の各熟成期間におけるピリジノリン含量は、熟成4日目;0.14〜0.18, 7日目;0.18〜0.22, 10日目;0.16〜0.21, 14日目;0.15〜0.18, 21日目;0.15〜0.21, 28日目;0.18〜0.22モル/モルコラーゲンとなり、食肉の熟成中におけるピリジノリン含量の変動が大きく、また食肉の熟成に伴う筋肉内ピリジノリンの明らかな変化は認められなかった。しかしながら、各熟成期間における筋肉内コラーゲンの収量にも同様の変化が認められていたことから、ピリジノリンによる筋肉内コラーゲン分子間の架橋程度が食肉の熟成に伴う筋肉内コラーゲン収量の変化に影響を及ぼしていることが示唆された。
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