ウサギやヤギに抗原を免疫して血液中に産生された抗体を得るには遠心分離で血清を採取すればよいのに対し、鶏卵からの抗体の精製は、卵黄中に大量に含まれる脂質成分を取り除くという比較的煩雑な操作が必要である。本研究ではまず、この方法について検討した結果、ポリエチレングリコールとクロロホルムを用いる方法が簡便であることがわかった。次に実際にニワトリに免疫を行って抗体の作成を試みた。ヒトインスリンを免疫したところ、抗体価の上昇が見られたものの産卵率が低下し、実用上十分な抗体量が得られなかった。このことから、産卵などの代謝に関連するホルモン等の免疫には実施に十分な配慮が必要であることがわかった。ついでウサギIgGを免疫したところ抗体価が上昇し、ラジオイムノアッセイ等の第二抗体の供給源としての有用性が示された。 鶏卵抗体を用いたホルモン等の高感度測定法の検討の一環として、性ステロイドホルモンに対する時間分解蛍光免疫測定法を行った。この方法は二次抗体を吸着させたプレートを用いて、測定試料中のステロイドホルモンとビオチン標識したステロイドホルモンとを一次抗体に対して競合的に結合させ、さらにユウロピウムなどのランタニド元素のキレートで標識したストレプトアビジンによって検出する方法である。アイソトープ標識(ラジオイムノアッセイ)での測定の場合と比較したところ、測定値の相関性が高く、しかもラジオイムノアッセイよりも高感度で、反応時間・測定時間も短かったため、有効な方法であることが示唆された。 さらに、将来ホルモン受容体に対する鶏卵抗体を作成し、その変動を解析するための基礎的検討として、ラットおよびニワトリの卵巣の顆粒膜細胞、精巣の間細胞に存在する性腺刺激ホルモン受容体の性質を検討し、それぞれの性質が大きく異なっていることを示唆する知見を得た。
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