ニワトリPit-1遺伝子のクローニングを行い、その構造解析を行った。ニワトリPit-1遺伝子は6つのエクソンと5つのイントロンからなる構造を有していた。クローン化されたPit-1遺伝子は5kbに及ぶ5'プロモーター領域を含んでおり、そのうちエクソン1に近い1kbについてその構造を明らかにした。哺乳類では転写開始点より1kb以内のエンハンサー領域が知られているが、コンピューターによるプロモーター領域の検索では、哺乳類で明らかになっている転写調節領域は認められなかった。下垂体におけるPit-1 mRNAの発現量は哺乳類に比べ非常に少なく、ノーザンブロットハイブリダイゼーションで検出する事が困難であった。プライマー伸長法による転写開始点の決定は行っていないが、クローニングされたニワトリPit-1 cDNAとPit-1遺伝子の相同性の比較からPit-1遺伝子はTATAボックスを欠く遺伝子であることが推測され、RNAポリメラーゼはTATAボックス以外のプロモーター配列を認識して転写を行っているものと考えられた。また本年度中にブリ成長ホルモン遺伝子の構造解析により、魚類と鳥類のPit-1結合配列が哺乳類とは異なる可能性を示唆した。この新規のPit-1結合領域がPit-1遺伝子に存在することが見いだされ、ニワトリPit-1遺伝子も哺乳類同様Pit-1自身により転写が調節されている可能性が示唆された。本研究ではCAT assayによるプロモーター領域の解析を行う予定であったが、哺乳類由来の培養細胞中ではレポーター遺伝子の活性が微弱であり十分な情報を得るには至らなかった。現在ニワトリ肝癌細胞のLMHを用いたCAT assayを行うと同時に、構造の明らかになっていない4kbのプロモーター領域の構造を解析中である。これらプロモーター領域の構造とCAT assayによるプロモーター活性の解析を詳細に行うことにより、鳥類のPit-1の発現調節機構の哺乳類との違いが明らかになるものと期待される。
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