1.酵素細胞化学的手法により、ニワトリ膵臓内におけるNADPH-diaphoraseの局在を検索した。 同酵素は、膵臓内の神経要素(神経節細胞、神経線維)に同定された。 NADPH-diaphorase陽性反応産物は、電子顕微鏡下において電子密度の高いdepositとして容易に観察された。 陽性神経節は、小葉間結合組織内に多く見出された。 神経節細胞内において反応産物は、核膜及びゴルジ装置に主に観察された。 これらの陽性細胞に終末している神経線維は同酵素に陰性であったことから、膵臓内に分布する酸化窒素放出神経は副交感神経節後線維であると思われる。 NADPH-diaphorase陽性神経線維は、膵臓内の細動脈周囲に密な神経叢を形成していた。 また主膵管の上皮下及び筋層にも比較的密に分布していた。 電顕下ではこれらの線維は、細動脈及び膵管の筋原線維に終末していた。 腺房間及びB島周囲にはまばらに陽性線維が認められたが、A島には認められなかった。 これらの結果よりニワトリ膵臓において酸化窒素は主に血流調節を介して膵分泌調節に与るものと思われる。 2.酸化窒素放出神経のマーカー酵素であるNADPH-diaphoraseと酸化窒素合成酵素(NOS)の分布比較を、酵素組織化学と免疫組織化学の二重染色により行った。 両酵素の分布は、多くの神経節細胞において一致したが、NOS陰性のNADPH-diaphorase陽性神経節細胞も存在した。 神経線維においてはNOSの染色性が著しく悪く比較検討するには到らなかった。 NOS免疫反応は、膵島細胞の内のインスリン産生細胞に認められたが、これについてはさらに詳細な検討が必要であると思われる。 これらの結果よりNADPH-diaphoraseは、ニワトリ膵臓においても酸化窒素放出神経のマーカー酵素として有効であると思われる。
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