本研究では、モルモット回腸平滑筋における電位依存性カルシウムチャネルに対し抑制作用を示すものとしてムスカリン受容体を、増大させるものとしてニューロテンシン受容体を取り上げ、これら受容体間の相互作用を知る初段階として上述の相反する効果の細胞内情報伝達機構を明らかにすることを目的とした。実験には回腸縦走筋から得た単離平滑筋細胞を用い、パッチクランプ法によりカルシウムチャネル電流を記録した。 1、カルシウムチャネル電流はムスカリン受容体刺激により抑制された。この抑制効果は一過性成分とその後の持続性成分からなり、いずれも百日咳毒素非感受性のG蛋白質を介して発現する。2、一過性の抑制はイノシトールリン脂質代謝産物であるイノシトール三リン酸を介した細胞内ストアからのカルシウム放出に起因する。3、持続性の抑制効果は発現が緩徐であることから何らかのセカンドメッセンジャーを介するものと考えられるが、既知のメッセンジャーであるイノシトール三リン酸、プロテインキナーゼC、サイクリックAMP、サイクリックGMPおよびアラキドン酸ではない。4、プロテインキナーゼCを活性化するホルボールエステルはカルシウムチャネル電流を増大させた。5、ニューロテンシン受容体刺激により生じる効果は、百日咳毒素感受性のG蛋白質を介したイノシトールリン脂質代謝経路に連関しており、プロテインキナーゼCがメッセンジャーである可能性が示唆された。 以上の成績のうち1〜4については既発表論文一編、投稿中論文一編としてまとめた。また、5については現在投稿準備中である。なお、ムスカリン受容体刺激による持続性抑制のメッセンジャーの同定、ならびにムスカリン受容体とニューロテンシン受容体間における情報伝達経路の相互調節機構について今後詳細に検討する必要がある。
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