研究概要 |
本研究は,イヌがアルツハイマー病のβアミロイド症の有効なモデル動物になりうることに注目して,イヌ胎子の脳細胞培養系を確立し,アミロイドβ前駆蛋白(APP)およびβ蛋白のin vitroにおける動向を検索することを目的とした.まず胎子大脳皮質組織を初代培養し,細胞分画を検討した.培養細胞をグリア線維性酸性蛋白(GFAP)およびニューロフィラメント(NF)に対する抗体による免疫染色により神経膠細胞と神経細胞の割合を調べた.その結果,神経細胞と膠細胞の割合は1:20から1:50ほどであり,1週間以上維持した場合は神経細胞は死滅した.次にアミロイドβ前駆蛋白がin vitroで産生されるか否かをを確認するため,初代培養2日目の大脳培養細胞をアミロイドβ前駆蛋白に対する抗体で免疫染色したところ,NFで陽性を示す神経細胞が同様にアミロイドβ前駆蛋白に陽性を示した.このことからイヌの神経細胞は培養下でもアミロイドβ前駆蛋白が産生されている事が判明した.一方,β蛋白に対する免疫染色を行ったところ,陽性所見は得られなかった.このことから,通常の培養条件下では,アミロイドβ前駆蛋白は産生されているものの,β蛋白は合成されていないことが判明した.現在,培養液中にカテプシン類の酵素やアポリポ蛋白などを加え培養を行いβ蛋白が産生されるか否かを検討している.一方,これまでイヌの剖検例のうち脳血管アミロイド症あるいは老人斑などβアミロイド症が見られた症例69例について疫学的な検討を行い.βアミロイドの発症が必ずしも年齢に依存していないことを明らかにし,その結果を海外の学術雑誌に発表した.
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