研究概要 |
今研究ではラット肝臓灌流法を用いて、細菌内毒素(LPS)のKupffer細胞を介する糖代謝応答へ影響を解析した。貧食刺激は肝臓からのプロスタグランジン(PG)類の放出を増大させ、このうちPGD_2,PGF_αがグリコーゲン分解に関与した。ホルボールエステル(PMA)のin vitroでの前投与は貧食による糖放出パターンを変化させ、トロンボキサン(TxA_2)産生を増大させた。細菌内毒素投与6時間後にはアラキドン酸からのTxA_2産生増大と糖放出が見られたが、貧食刺激、外因性PGD_2での糖放出は殆ど見られなかった。TxA_2によるグリコーゲン分解は肝実質細胞への直接刺激ではなく、欠陥収縮による局部的な酸素欠乏(Anoxia)により引き起こされると考えられた。一方、血小板活性化因子(PAF)による糖放出にはPG,Txおよびロイコトリエン(LT)が関与した。また、PMAによってPAFによる糖放出パターンが変化した。この結果は、貧食による糖放出と同様にTx産生経路が活性化された為であった。しかし、LPS投与6時間後には外因性PGD_2による糖放出がないにもかかわらず、PAFによる肝酸素消費の抑制と糖放出が引き続き見られた。つまり細菌内毒素によって肝臓でのアラキドン酸代謝が変化し、貧食以外のPAFなどの刺激によってTxA_2産生が増大し、肝臓局所の酸素欠乏が引き起こされうることが示された。この結果は細菌内毒素による肝障害発現に関係しているかもしれない。さらにLPS投与24時間後にはPAFによるTxおよびLTの放出の低下と共に糖代謝応答の減弱が見られた。後者の結果は細菌内毒素に対する寛容現象を部分的に説明している。
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