家畜の発育期骨軟骨疾患の病態発生のメカニズムの一端を明らかにするために、同疾病を好発するウマについて発育初期の軟骨代謝活性の変動を検索している。 1)軟骨代謝活性の測定について、ウマ関節軟骨由来プロテオグリカンモノマーを分離、精製した。それをさらにコンドロイチナーゼABCで消化したケラタン硫酸-コア蛋白画分を用いて、ウマのケラタン硫酸の酵素免疫測定系(インヒビション-ELISA法)を確立した。さらに、詳細な条件設定を行い、測定系の信頼度の向上に努めた。 2)1)で確立したケラタン硫酸量測定系を用いて、発育初期の馬、すなわち出生1週後から18か月齢までの経時的な血清について、軟骨代謝のマーカーであるケラタン硫酸量の変動を探索した。その結果、出生直後より3か月齢までの軟骨活性はそれ以降に比べて極めて高く、また何等かの発育期関節疾患を発症した馬では、同時期の軟骨活性が正常に発育をした馬に比べて有意に高いことが示された。これと同時に、当疾病と関連が深いと考えられている銅代謝を検索した。血清銅およびその機能的インデッックスとしてセルロプラスミン量とそのオキシダーゼ活性を測定した。同様に、各種必須微量元素も測定した。発育初期の血清銅濃度、およびセルロプラスミン量はその高い必要性にも関わらず非常に低く、特に生後1か月未満の馬においては、その欠乏との臨界状態にあることが示唆され、家畜の飼養管理における同時期の重要性が確認された。 3)同疾患の関節内での変化を明らかにすべく、ウマの関節軟骨細胞および滑膜細胞の初代培養系を確立した。関節鏡下手術により得られた軟骨細胞および滑膜細胞を用いて、まず、各種炎症性サイトカイン(IL-1、IL-6およびTNF)に対する反応性を検討した。その結果、TNFの刺激によって、濃度依存性に軟骨細胞のプロテオグリカン産生量が低下することが明らかとなった。さらに、IGF-1およびIGF-2についても検索しており、近日中にそれについても考察できる予定である。
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