研究概要 |
犬の骨折において創外固定法と骨電気刺激法を組み合わせて使用した場合の骨癒合促進効果を明らかにする目的で、以下の実験を実施した。実験には臨床的に健康なビ-グル成犬5頭を用い、セボフルレンによる全身麻酔下で実験犬の一側の脛骨骨幹部に約1.5cm間隔で6本のキルシュナー鋼線を内外方向に経皮的に刺入した後、これらの鋼線を歯科用レジンを用いて固定した。その後、脛骨頭側面よりアプローチして、脛骨中央部に約1.5cmの骨欠損部を作製した。実験群3頭に対しては、手術1週間後より骨癒合促進電気刺激装置オステオトロンによる電気刺激を1日2時間25〜49日間連日実施した。対照群2頭は無処置とし,術後58〜59日間経過観察を行った。術後はいずれの群も患肢の負重や跛行の程度などを臨床的に観察するとともに、定期的にX線撮影を行い骨折治癒過程を追跡した。また、実験終了12日および3日前にオキシテトラサイクリンを筋肉内に投与し、骨の2重ラベリングを行った。実験終了後、骨欠損部周囲の組織を採取し、非脱灰標本および脱灰標本を作製して組織学的に検索を行うとともに軟X線撮影を行い、各群の骨新生の程度を比較検討した。 その結果、実験群、対照群ともに実験期間中にX線学的に骨癒合の認められた例はなかった。組織学的所見として、両群ともに骨欠損部の断端付近では骨膜からの著明な骨新生と骨髄腔側からの骨新生がみられ、そのすぐ遠位では水平方向へのコラーゲン線維の配向が認められたが、その程度は実験群の方が若干優れている傾向があった。また、同一犬でみた場合、遠位と比較して近位の断端の方が骨増生が優れていた。さらに、実験群では皮質骨におけるテトラサイクリンのラベリングが顕著であり、活発な骨代謝が起こっていることが示唆された。 今回の結果からは実験群と対照群における明らかな差異は認められなかった。これは電気刺激時間が短かったためであると考えられるが、治療に対する協力を犬に求めることは困難であるため、本研究で行ったような方法での電気刺激は1日2時間が限度であり、本治療法を応用するためには特別な工夫が必要であると考えられた。
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