研究概要 |
erb-B3は,乳癌関連遺伝子群の一つであるerb-B3ファミリーに含まれる遺伝子であり,レセプタータイプのチロシンキナーゼをコードしていることが知られている.erb-B3に関してヒトでは,erb-BcDNAの全長がクローニングされ,その生理的機能の解析が進んでいる.しかし,獣医学領域では,erb-B3を含むerb-Bファミリーの詳細な解析は充分行われているとはいえず,特に腫瘍発生率の増加が問題になっている伴侶動物においては未だ手つかずの状態である.そこで本研究は,伴侶動物の1例としてネコのerb-B3をクローニングし,その発現の意義について検討することを目的として研究を行った.そこで.ネコ乳癌細胞のcDNAライブラリーをスクリーニングする目的で,RT-PCR法によるネコerb-B3に対するcDNAプローブの作製を開始した.まず,RT-PCRのためのプライマーのデザインを検討する目的でerb-B3のホモロジー検索を行った.しかし,今までのところ,erb-B3はヒトのcDNAの全長の配列しか報告されていないため,動物種間で保存されている部分について情報を得ることはできなかった.そこで現在,erb-Bファミリーはチロシンキナーゼドメインに互いに相同性が高い部分を持つことが知られていることから,他のerb-Bファミリー間で保存されており,且つ既知の動物種で相同性の高い部分を検索し,RT-PCRのためのプライマーをデザインしている.また,RT-PCRによるプローブ以外にも,v-erb-Bのプローブを用いてスクリーニングを行うことも検討している.また,当研究室で樹立されたネコ乳癌細胞株のcDNAライブラリーの作製も現在開始している.
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