泌乳は哺乳動物に特異的な生理現象であり、この現象は数多くのホルモンにより調節されていることが知られている。泌乳をつかさどる乳腺におけて特にプロラクチンが乳腺上皮細胞の増殖、分化および乳汁分泌活動に重要な役割を担っている。このプロラクチンの情報を細胞内へ伝達するためには、細胞膜上に受容体が存在することが重要である。乳腺細胞ではプロラクチン受容体が、妊娠期に増加、泌乳期に増加および減少することが報告されているが、この調節機構は明らかにされていない。本研究では、in vitroで単純化された系を用いてこれらの現象を明らかにするために、本研究に利用できるウシ乳腺細胞の培養系を確立することを第一に研究を行った。 分娩後1ケ月以内に屠殺・解剖されたウシおよび乾乳期のウシから乳腺組織を回収し、細切した後酵素処理により乳腺細胞に分離・単離を行った。乳腺細胞を酵素処理後600gにて遠心回収した細胞および細胞魂は800gにて遠心回収した細胞よりも凍結保存後の生存率がよいことが分かった。培養法にプレート上の2次元培養とコラーゲンゲル上の2次元培養の比較を行ったところ、コラーゲンゲルを用いた培養がより増殖の割合が高かった。その後は、コラーゲンゲル上に1週間培養した細胞の回収をコラゲナーゼとトリプシンにより行った。プロラクチンによる細胞内カルシウムイオン濃度([Ca]i)の変化を測定するために、Ca^<2+>の径行指示薬であるfura-2 AMを取り込ませ、[Ca]iの測定を行っている途中でプロラクチンを投与したが、[Ca]iの変化が捕らえられなかった。この原因については、現在検討中であり、細胞回収時の処理方法および培養プレートを直接Caイメージプロセッサーにのせ[Ca]iを測定する方法も検討中である。
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