本年度の研究実施計画に沿って(1)Weibel-Palade(WP)小体が増加している満期産ヒト臍帯静脈を材料として線維芽細胞増殖因子(fibroblast growth factor : FGF)のうち血管内皮細胞において産生されるbasic FGF(b-FGF)の免疫局在の解析を行った。同血管をZamboni液で固定後、アルコール脱水、LowicrylK4M包埋し、超薄切片上で抗ヒトb-FGF抗体を一次抗体に用いた免疫金法を施行した。その結果、b-FGF免疫陽性金粒子は内皮細胞の細胞膜とWP小体に局在性を示した。また、粗面小胞体にも微弱ながらb-FGF免疫陽性反応を示した。これらの結果から、b-FGFは内皮細胞で産生された後、WP小体に貯蔵されることが明らかとなったが、細胞膜への局在性から、血漿中のb-FGFを内皮細胞が取り込んでいる可能性もあり、その解明は今後の課題である。(2)b-FGFの産生・放出を促進する腫瘍壊死因子とトロンビンの添加によるb-FGFの免疫局在の変動の解析はb-FGF抗原性の問題から研究実施計画(1)で用いた固定・包埋法による形態保持が不良のため、明確な成果を得るまでに至っておらず、現在、解析を急いでいる。(3)WP小体の脱顆粒を誘発するcompound48/80添加によるb-FGFの免疫局在の変化に関する解析を行った。その結果、WP小体は著明な脱顆粒像と開口分泌による内容物の管腔側および基底側への細胞外放出像を示し、b-FGF免疫陽性金粒子はこれらの形態変化を示したWP小体限界膜やその近傍の細胞質および細胞外に放出された内容物に局在し、b-FGFの細胞外放出過程がWP小体の挙動に連動することが明らかとなった。 今後、研究実施計画(2)の解析を急ぐとともに、b-FGFの安定化に関与するヘパラン硫酸の内皮細胞における局在も検索する予定である。
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