本研究では、ウサギ胃酸分泌細胞の基底側膜に存在する塩基イオンチャネル(C1^-チャネル)のプロスタグランジンE_2(PGE_2)による活性化機構の全容を解明すること、及びこのC1^-チャネルと細胞防御機構との機能的連関性を検討することを目的とした。本研究により、以下のような数々の興味深い新知見を得ることができた。 1.PGE_2によるC1^-チャネルの活性化機構の全容の解明……パッチクランプ法、顕微蛍光Ca^<2+>測定法、酸素免疫学的手法を組み合わせた実験から、PGE_2によるC1^-チャネルの活性化に関与する細胞内メッセンジャーは、Ca^<2+>と一酸化窒素(NO)とcGMPであることがわかり、細胞内Ca^<2+>濃度の上昇が、NO産生を刺激し、それに続きcGMPの産生が増大しC1^-チャネルが活性化されるものと考えられた。PGEリセプターのサブタイプに対してEP_3アゴニスト/EP_1アンタゴニストとして働くONO-NT-012は、細胞内Ca^<2+>濃度を上昇させ、C1^-チャネルを活性化した。また、百日咳毒素(PTX)で細胞を前処理しておくと、PGE_2の効果は完全に抑制された。したがってこの機構には、EP_3リセプターが関与しており、PTX感受性のGTP結合蛋白質がEP_3リセプターにカップルしているものと考えられた。 2.C1^-チャネルと細胞防御機構との機能的連関……胃酸分泌細胞のエタノールによる障害の程度を、予め細胞内にロードした蛍光色素(BCECF)の漏れの量を測定することにより定量化した。胃酸分泌細胞をNO発生剤のニトロプルシッドやcGMPアナログのdibutyryl cGMPで前処理しておくと、エタノールによる障害は有意に軽減された。このcGMPの細胞防御効果は、C1^-チャネル阻害剤(NPPB)の存在化では観察されなかった。以上のことからC1^-チャネルの活性化が細胞防御機構に深く関与していることが示唆された。
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