研究概要 |
橋・延髄のみ,中脳および脳全体を虚血した際に現われる心血管反応に対して、動脈圧受容器、孤束核(NTS)、尾側延髄腹外側野(CVLM)、迷走神経背側運動核(DMNV)、疑核(NA)および吻側延髄外側野(RVLM)がどの程度の役割を果しているのかを研究した。橋・延髄を虚血にすると平均動脈圧(MAP)は虚血前値から48±7mmHg、腎交感神経活動(RNA)は238±12%と共に増加した。これに対し心拍数(HR)は虚血前値から135±13bpm減少した。圧受容器を切除すると、MAPおよびRNAの増加量はそれぞれ明らかに増大した。この時、HRは16±6bpmの増加へと一転した。また、NTS、CVLM、NAおよびDMNVの破壊は、橋・延髄の虚血によるMAP,RNAならびにHRの増加反応に影響を与えなかった。中脳および脳全体を虚血した際の昇圧反応も橋・延髄の虚血の反応と同様に,虚血性高血圧による圧受容器の二次的な抑制のみを受けることがわかった。またこれらの昇圧および交感神経興奮反応はRVLMを破壊すると消失することから、橋・延髄,中脳および脳全体の虚血によって引き起こされる昇圧反応の発現には、RVLMがその中心的役割を果しており、NTS、CVLM、NAおよびDMNVの各部位は昇圧反応の大きさに殆ど影響を与えない事がわかった。 延髄の昇圧ニューロンは脳血流が4ml/min以下に減少すると興奮し脳灌流量を増加させるため昇圧反応を引き起こすが、中脳の昇圧ニューロンは脳血流が2ml/min以下で初めて興奮し昇圧反応を引き起こした。また、延髄の昇圧ニューロンは脳灌流量が2ml/min以下で持続すると、その興奮性は徐々に失なわれ、灌流量が0ml/minになると約40秒でその興奮性は全く消失して、血圧はショックレベルまで減少した。このことから、中脳からの興奮性入力を受けて昇圧反応が発現するためには延髄の動脈灌流量が一定レベル以上確保されていることが前提となることが示唆された。
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