光受容性松果体の遠心性神経の出力様式には、感色性応答と非感色性応答の2種類がある。感色性応答とは比較的長波長の光刺激(緑〜赤)で神経細胞が興奮し、短波長光(UV〜青)では抑制される応答であり、非感色性応答とは全ての波長の光刺激に対して抑制される応答である。したがって松果体内には少なくとも3種類の光受容細胞の存在が示唆されるが、電気生理学的には、感色性応答の抑制性応答に関与するUV-receptorと、非感色性応答に関与する光受容細胞が同定されているのみである。いずれも光により細胞の膜電位は過分極する。感色性応答の興奮性応答に関与する光受容細胞については、現在全く知られていない。本研究では、この興奮性応答に関与する光受容細胞の同定を目的とした。 ある種の光受容性松果体には、従来の光受容細胞の様にcGMPを細胞内セカンドメッセンジャーとしないタイプの光受容細胞が存在することが示唆されている。したがってまず、この興奮性応答に関与している光受容細胞が、従来知られている光受容細胞と同じような性質を持っているかどうかを今回特に検討した。 カワヤツメ(Lampetra japonica)松果体の灌流液に8ブロム-cGMP、cAMPを投与し、そのときの二次ニューロンからの光応答を記録することにより、松果体の光応答機構にこれらの環状ヌクレオチドがどのように関与しているかをみた。その結果全ての光応答に関与する松果体光受容細胞の細胞内セカンドメッセンジャーは、cGMPであることが示唆された。また感色性応答を示す神経細胞は、神経の活動電位の細胞外記録により、松果体の周辺部にあることがわかった。以上のことから今回同定しようとした光受容細胞も、cGMPを細胞内セカンドメッセンジャーとした従来型の光受容細胞であり、今後は松果体周辺部への細胞内記録を試みることにより、目的とする細胞を同定したい。
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