血管内皮細胞において、細胞内Ca^<2+> ([Ca^<2+>a]i)によって塩素電流が誘発される。このCa^<2+>依存性塩素電流の活性化に関わる細胞内情報伝達をパッチクランプ法により検討した。また、膜電位による細胞内Ca^<2+>濃度の調節をパッチクランプ法を併用した蛍光顕微測光法にて検討した。 1. Ca^<2+>依存性塩素電流の活性化機序と細胞内情報伝達 (1)Ca^<2+>依存性塩素電流はCa^<2+>誘発性K^+電流に遅れて発生した。(2) [Ca^<2+>a]iおよび細胞内ATP濃度に依存して増大した。(3)細胞内にATPの代りにATPのアナログであるATP_γS、AMP-PNPを適用したところ、ATP_γSではATP適用時以上に電流が増大したのに対し、AMP-PNPでは電流の増大はごく僅かであった。(4)カルモジュリン(CaM)拮抗剤であるトリフルオペラジンおよびW-7によって可逆的に抑制された。さらに、カルモジュリンキナーゼII(CaMKII)阻害剤であるKN-93によっても可逆的に抑制された。 2.膜電位による[Ca^<2+>]iの調節 (1)灌流液に高K^+溶液および低Cl^-溶液を用いると膜電位は脱分離し、[Ca^<2+>]iは減少した。 (2)灌流液にNa^+除去液を適用すると膜電位は過分極し、[Ca^<2+>]iは上昇した。 以上の結果より、Ca^<2+>依存性塩素電流の活性化には、Ca-CaM複合体を介したCaMKIIのリン酸化が関与していることが示唆された。また、[Ca^<2+>]iは、膜の過分極で上昇し、脱分極で減少することが明らかになった。今後は、生理的アゴニスト存在下における膜電位と[Ca^<2+>]iの関係、さらに細胞内情報伝達系のK^+電流、カチオン電流による修飾について検討を進めたい。
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