研究概要 |
報告者は,輸精管上皮におけるK^+能動輸送を中心としたイオン輸送機構の研究のために平成7年度科学研究費補助金(奨励研究A)を交付された.申請時には補助金をデータ取得装置Axon DIGIDATA1200およびデータ取得解析ソフトAxon pCLAMP6.0の購入のために充てる予定であったが,交付通知以前に本大学教室研究費にて購入できたので,動作が不安定で問題があった現有パッチクランプアンプの替わりに高性能パッチクランプアンプAxon AXOPATCH200A新規購入のために充てた.平成7年度後半より低雑音single channel recordingを主眼としたパッチクランプシステムの製作に取りかかった.Faraday cage,灌流装置および除震システムの改良を繰返し,現在最良時では1kHz filteredにて0.1pAp-pの低雑音を得るに至った.現在のところ,single channel levelで確認されているK^+channelは250pSのmaxi-K^+ channelのみであるが,low conductanceでadrenaline投与にて活性化されるK^+ channelが存在すると予想されるので,次の目標としてそのK^+ channelのsingle channel levelでの同定を行おうとしているところである. また実験と平行して輸精管上皮細胞のcomputer simulation modelの開発を行い,現在あるprimary modelが作動中である.このmodelは管腔側の電位平衡以上の高K^+濃度に逆らってK^+の能動輸送を行うことができるが,その調節にはK^+ conductanceのみならずCl^- conductanceが深く関与している可能性をも示唆した.
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