研究概要 |
本研究の目的を達成するため、オポッサム腎由来の培養近位尿細管細胞(OK細胞)膜に存在する、約70pSの単一チャネルコンダクタンスを持った内向き整流性K^+チャネルの活性調節機序について、patch-clamp法を用いて調べた。 このK^+チャネルは、cell-attached patchにおいて活発に開口している。浴液Mg^<2+>存在下でinside-out patchにするとチャネル活性は徐々に低下し、いわゆるrun-down現象を起こすが、3mMMg^<2+>-ATPを添加することでチャネル活性は回復する。さらにAキナーゼ(20nM)を加えることでチャネル活性がより上昇することから、inside-out patchにおけるATPのチャネル活性化作用は細胞膜内側の膜結合性Aキナーゼによるチャネル蛋白の燐酸化によるものと考えられた(森 禎章、他.日腎誌 37(Suppl):82,1995)。また、浴液Mg^<2+>存在下での非特異的脱燐酸化酵素阻害剤(orthvanadate)の添加や、浴液Mg^<2+>の除去によってチャネルのrun-downが阻止できることから、このrun-downはMg^<2+>依存性蛋白脱燐酸化作用によるものと考えられた(森 禎章、他.第38回日本腎臓学会,1996,発表予定)。 このATP依存性K^+チャネルは、膵β細胞のATP感受性K^+チャネルと同様、スルフォニル尿素剤(glybenclamide等)によりチャネル活性が阻害される。しかし、このチャネルはATP感受性K^+チャネルと異なり、浴液中の遊離ATPによるチャネル阻害作用やK^+チャネルオープナ-(nicorandil等)によるチャネル活性化作用を示さなかった(Yoshiaki Mori, et al. Jpn J Physiol 45(Suppl 1):S38, 1995)。従って、このチャネル蛋白にはAキナーゼによる燐酸化部位とスルフォニル尿素剤結合部位が存在するが、ATP結合部位は存在しないものと考えられた。さらに我々は、ATP依存性K^+チャネルの活性が細胞内pHにより変化することも見いだしており、このpH感受性機序についても現在検討中である。
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