研究結果 これまで見出した知見を更に発展させ、正常人(生理)と過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome;IBS)患者(病態生理)を比較することによって、電気刺激下の消化管運動と脳機能検査法をヒトで確立した。広告と掲示で募集した健常成人と典型的IBS患者を対象とし、検査日の朝9:00より全例にX線透視下でOlympus社製大腸videoscope CF-200Lを用いて経肛門的にassemblyを下行結腸-S状結腸接合部に留置した。Assemblyは半導体sensorのSynectics社製silicon pressure transducer、barostat、刺激電極からなり、pressure transducerによって、肛門から約60cmの下行結腸(A)、約55cm(B)、50cm(C)のS状結腸の消化管内圧を、barostatによって約65〜45cmの結腸toneを測定した。右上腕に血圧カフ、前胸部に心電図電極、呼吸曲線probe、頭部に脳波電極を装着し、これらをMIC-9800システムポリグラフ、7T18型シグナルプロセッサ、XR-510型データレコーダ、Synectics Visceral Stimulator(SVS)、PC-9801RA21型コンピュータに接続し、生体信号をリアルタイムで導出かつ保存した。この手法により、barostatの膨張で電極が大腸粘膜に密着し、消化管内圧の感度が飛躍的に向上し、大腸の壁在反射を変化させることなく、これまで明らかにされなかった弛緩現象を含む結腸toneを検出し得た。また、Bに接する中央の2つの刺激電極で大腸を電気的に刺激し、結腸toneの変化と大脳誘発電位を検出した。大腸の電気刺激によって結腸toneは僅かに低下し、痛覚閾値は4-20mAであった。大腸拡張刺激による痛覚閾値は正常人よりもIBS患者で低く、大腸運動係数は正常人が拡張刺激による変化に乏しいのに対してIBS患者では亢進しており、大脳誘発電位もIBS患者で短潜時と振幅の増大が見られた。 以上、わが平成7年度の課題研究は脳腸機能相関における結腸toneと末梢-中枢プロセシングの生理と病態生理を明らかにしつつあり、一定の成果をおさめることができた。 この研究成果の一部は、国内の学会で発表され、国外でも発表される予定である。
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