研究概要 |
研究目的:我々は免疫サイトカインの一つであり、脳内でも産生されるインターフェロンα(IFNα、50-200U)が視床下部内側索前野(MPO)に作用すると、脾臓交感神経系の活性化を介して、初期感染防御の主役であるナチュラルキラー細胞活性を抑制することを明らかにしてきた。本研究においては、ストレス・免疫系修飾の媒介機序としてのこの経路の全体像解明を目的とし、特にその脳内微細機序を明らかにすることを目的とした。 研究効果:生後10-20日のウイスター系ラットのMPOを含む厚さ120-150μmの脳薄切切片を作成し、スライスパッチ法により、MPOニューロンのホールセル電流を記録した。記録ニューロンから約100μmの位置に置いたガラス微小管内より100μMのグルタミン酸を圧力により微量投与すると内向き電流が誘発され、この電流はD-AP5によって大部分が抑制されることから、NMDA受容体を介した反応であることが判明した。 IFNα(100U/ml,2min)を潅流投与してみると、MPOニューロンのグルタミン酸電流およびNMDA電流は、IFNα投与開始5分以内におよそ50%まで減弱し、この抑制効果は1時間以上持続した。このNMDA電流抑制効果は、ナロキソン、サリチル酸、スーパーオキサイドディスムターゼ、L-ニトローω-アルギニンのいずれかをIFNαと同時投与することによりブロックされ、IFNαの替わりにDAGO、H_2O_2を潅流投与することで再現された。プロスタグランディンE2投与は効果が認められなかった。 以上より、IFNαのMPOに対する作用の少くとも一部は、エピオイド受容体、活性化酸素、一酸化窒素を介したNMDA応答電流の抑制を介して発現することが明かになった。さらにこの反応に対するグリア細胞の関与について、急性単離神経細胞、培養グリア細胞を用いて同様の実験を行うことにより検討中であり、グリア細胞の関与を示唆する所見を得つつある。
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