実験1)高脂肪食による高血糖と肥満:ソディウムコレート及びコレステロール添加による予防効果 高サフラワー油食(脂肪エネルギー比60%)でマウスを飼育すると、高炭水化物食(10%)に比し、内臓性肥満と糖尿病を生じる。しかし、0.5%のコレートを高脂肪食の中に加えておくと、肥満及び糖尿病の発症が防止された。又、血中インスリン値も低下し、in vitroでの筋肉(滑車上筋)での糖の取り込みもインスリンンの有無にかかわらず、高脂肪食のみの群に比して20〜40%増加し、筋肉組織でのインスリン抵抗性の改善が認められた。又、0.5%コレートと1%コレステロールの両方を添加すると、糖の取り込みが更に増加し、50〜80%の増加が認められインスリン抵抗性が著明に改善された。しかしGLUT4の蛋白量、mRNA量は各群で変化なく、コレートのインスリン抵抗性の改善はインスリンレセプターのシグナリングやGLUT4の活性化などGLUT4蛋白量増加以外の機序が働いていることを示た。以上の結果から、コレート、コレステロール及び他の類似物質が肥満や糖尿病の発症防止に役に立つ可能性を示した。 実験2)高脂肪食による高血糖と肥満:各種食事性油脂の効果 どのような食事性油脂が糖尿病や肥満の発生に深く関与しているかを明らかにするために、脂肪酸組成の異なる7種類の食油(ラ-ド、パーム油、サフラワー油、シソ油、大豆油、菜種油、魚油)について、高脂肪食を作成し、インスリン抵抗性及び肥満の程度をC57BL/6マウスを用いて検討した。各食餌群間で、摂取エネルギー量に差が見られないにも係わらず、約8周目から各群間に体重差が観察され、大豆、パーム油、なたね油、ラ-ド、サフラワー油で顕著な肥満を示したが魚油では肥満を生じなかった。OGTTの30分値についてみると、シソ油、魚油、パーム油の3群はそれ程血糖値は上げないなどの、食油の違いによる差異が明らかになった。また、内臓の脂肪量あるいは体重量とOGTTの30分値との間に強い正の相関が得られ、このときのr^2値より、肥満、特に内臓肥満が高血糖の原因の約60%寄与していることが明らかになった。以上のことから、食事性脂肪酸の種類によって糖尿病や肥満の発生に違いが生じること、さらに肥満、特に内臓肥満が高血糖の原因として大きく寄与していることを明らかにした。
|