今年度の研究では主として中枢神経系(CNS)の前駆細胞に対するETの作用について検討を行うため、(前駆細胞の採取が可能であることから)胎生13日目の脳よりPercoll gradient法およびdifferential a ttachment法により前駆細胞を分離し培養を行った。その結果、CNSの前駆細胞ではET_BRがdominantに発現しており、^<12>5I-ET-1を用いた受容体結合実験から1細胞当たりの受容体数は1900sites、結合親和定数は0.76nMであることが認められた。また、10μM以上の濃度のET-1によってPIturnoverの亢進が認められ、さらに微弱ながらMAP kinaseの活性化が生じることが認められた。従って、ETによってCNSの前駆細胞での細胞内シグナル伝達系が活性化することが認められた。しかしながら、顕著な^3H-thymidine incorporationの上昇が認められなかったことから、ETはCNSの前駆細胞に対してmitogenとして作用しないことが示唆された。さらに、前駆細胞からneuronsおよびglial cells(主にastrocytes)への分化に関して、それぞれMAP-2ならびにGFAPに対する抗体を用いて検討を行った結果、両者への分化の割合に対するETの直接的な作用は認められなかったが、一旦glial cellsに分化した後の細胞に対してETのmitogenicな作用が認められ、glial cellsの相対的な割合が増加することが確認された。従って、CNS構築におけるETの作用はgliaにcommitmentされた細胞に対して発現され、glial cellsのmaturationの過程に影響を及ぼす可能性が示唆された。今後はglial cellsのmaturationの過程におけるETの役割に焦点を当て検討を行って行く予定である。
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