研究概要 |
血小板凝集抑制ならびに血管拡張作用という強力な生理活性をもつプロスタサイクリンの合成酵素遺伝子の構造を明らかにした。ヒト・プロスタサイクリン合成酵素(PGISと略す)の遺伝子は、10個のエクソンからなり約60kbであることが明らかとなった。本酵素遺伝子の3'非翻訳領域の塩基配列を決定したところ、複数のポリアデニレーションシグナルと3つのAlu反復配列が存在していた。3'非翻訳領域の異なる領域をプローブに用いたRNAブロットハイブリダイゼーションにより、ヒトPGISの6kbと3kbのmRNAは3'非翻訳領域の長さの違いによることが明らかになった。一方、ヒトPGIS遺伝子の5'非翻訳領域は非常にGC含量が高く、プライマー伸張法にて転写開始点を決定したところ、本酵素遺伝子の転写開始点は翻訳開始点の49bp上流であった。この領域にSp1,AP-2の認識配列が存在しており、さらに上流の塩基配列にγ-IFN,NF-κB,GATAなどの転写因子の認識配列が認められた。 ヒトPGIS遺伝子のプロモーター領域を調べるために、5'上流のDNA断片をルシフェラーゼ遺伝子の上流に挿入し、得られたトランスフェクションベクターをヒトおよびウシの動脈内皮細胞にリポフェクチンを用いて導入し、一過性に発現するルシフェラーゼ活性を測定してプロモーター活性を調べたところ、翻訳開始点から150bpのGC含量が高くSp1,AP-2の認識配列を含む領域がプロモーター活性を有することが明らかとなった。
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