【目的】癌細胞の増殖・分化にチロシンキナーゼ(PTK)を介したシグナル伝達機構が重要とされる。食道癌ではどのような種類のPTKが発現しているのか、その全体像を把握する報告はない。今年度、我々は食道癌に発現するPTKをスクリーニングし、その意義を検討した。 【方法】食道癌培養細胞に発現するPTKを変性プライマーを用いたRT-PCR法によりクローニングした。さらに、同定された各種PTKのmRNA発現を食道癌手術及び正常食道粘膜においてノザン法により検索した。 【結果と考察】食道培養細胞から10種類の受容体型PTK:EGFR、FGFR4、Cak、HEK2、HEK8、Eck、Erk、IGF1R、Axl、Skyと1種類の非受容体型PTK:Tyk2が同定された。これらのPTKは全て、ノザン解析にて培養細胞、正常食道粘膜及び食道癌手術材料での発現が確認された。同一症例の癌部と非癌部を比較すると、ほとんどの例で同等が癌部での発現が増加していた(1.1〜1.75倍)。これらの結果より、同定されたPTKは扁平上皮の増殖に関与すると考えられた。また高発現するPTKの種類や発現量は症例により差があり、それぞれの腫瘍の生物学的態度との関連を検討中である。
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