軟部肉腫に対し、分子生物学的手法を用いた検討を行い、以下の実績をあげた。 1)血管肉腫のバラフィン標本よりDNAを抽出し、PCR法により血管系の軟部肉腫であるカポジ肉腫と関係があると報告されているウイルス(Kaposi-sarcoma related herpes-like virus)の検討を行った。血管肉腫はカポジ肉腫とは異なり、検討した全症例においてKaposi-sarcoma related herpes-like virusは確認されなかった。 2)(1)と同じく血管肉腫のパラフィン標本より抽出したDNAを用いて、PCR-SSCP法により癌抑制遺伝子p53などの異常の検討を行った。全症例の約40%にp53の異常が確認された。 3)軟部肉腫全般のパラフィン標本を用いて、Flow cytometryによって核の倍数体の検討を行い、患者の予後と比較検討した。核が異数倍体の症例の予後の悪いことを明かにした。 4)軟部肉腫の一種であるユ-イング肉腫(Ewing's sarcoma)の染色体異常の部分に対するプローブを用い、fluorescence in situ hybridization(FISH)法にてユ-イング肉腫の確定診断が可能となるかどうかを検討中である。 5)軟部肉腫全般において癌抑制遺伝子p53と癌遺伝子bcl-2の免疫染色を行い、bcl-2の発現と患者の予後とが関係することを明かにした。 6)全国から収集した血管肉腫症例99例の臨床病理学的特徴を検討し、さらに免疫組織的な特徴も検討した。さらに血管肉腫の患者予後に関係する因子についての検討を行った。
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