研究概要 |
1)AIDS-KSの長期培養細胞株の免疫細胞化学染色と透過型電子顕微鏡による観察 AIDS-KSの長期培養細胞は免疫細胞化学的には最も原始的な中間系filamentであるVimentinが陽性である。その他F-XIIIa,CD14,ICAM-I,VCAM-I,MHC-Iが陽性である。継代を重ねていくと一部ではSMA,MHC-IIも陽性になる、透過型電子顕微鏡による観察では胞体内にIysozome,Golgi装置やpinocytic vesicleが豊富である。さらにconfluentな状態では血管内皮細胞と同様に管腔を形成してくる。しかしWeibel-Palade bodyは見られない。以上の結果はKSの特徴である紡錐形細胞が未分化な間葉系細胞由来であり血管内皮細胞への分化能をもつことを示唆している。 2)Herpesvirus-like DNA sequenceの存在 AIDS-KならびにAfrican-KS組織を用いてPCRを行った結果大部分の症例Herpesvirus-like DNA sequenceの存在を確認した。しかしこれが病理発生に関与しているかどうかは疑問であった。 3)AIDS-KSの発症におけるサイトカインの関与 AIDS-KS組織を用いたRT-PCR法によりbFGFとVEGFのmRNA発現が強く見られることを見い出した。さらにAIDS-KSの長期培養細胞上清中に見られる血管内皮細胞増殖促進活性はbFGFとVEGFによって担われていることを明らかにした。特にVEGFは血管内皮細胞の透過性を高め浮腫を引き起こすことからAIDS-KSの発症に深く関与していると思われた。 以上により免疫能低下あるいは免疫監視機構の破綻を背景としてHIV等のvirusや様々な病原体の感染によって活性化されたリンパ球、マクロファージ、血管内皮細胞や細胞外基質から出された種々のサイトカイン(特にbFGFとVEGFが主である)が複数に絡み合ってKSの病理発生に関与していることを明らかにした。
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