1.ヒトBリンパ腫培養株HBL-6、HBL-9におけるc-myc、bcl-2遺伝子発現の検討 Fas抗原陽性のヒトBリンパ腫培養株HBL-6とHBL-9を培養し、経時的な形態観察とDNA・RNA抽出を行った。その結果、HBL-9ではDNAのladder formationおよび形態学的観察にて24〜36時間でspontaneous apotosisを起こすことが確認されたが、HBL-6では60時間でもapotosisを生じなかった。さらにNorthern法にてc-myc、bcl-2遺伝子のmRNAの発現を検討したところ、HBL-9では24時間後にcontrolの約3倍のc-myc mRNAの発現が認められ、HBL-9のapotosisとc-myc遺伝子の一過性発現との関連が示唆された。一方、HBL-6ではc-mycの経時的な発現に大きな差異は認められなかった。bcl-2遺伝子に関しては、HBL-6・HBL-9ともに遺伝子発現は全く認められず、同遺伝子の関与については不明であった。今後さらに検討が必要と考えられる。 2.培養細胞株HBL-9へのbcl-2遺伝子の導入 ヒトbcl-2遺伝子cDNA(B4 fragment)をレトロウイルスベクターに挿入した組換え体ウイルスDNA(pBC140B4)をElectroporation法にてHBL-9に導入し、Neomycinによるselectionを行ったところ13個のコロニーを得た。これらの各コロニーからcell lysateを抽出しWestern法にてscreeningしたが、bcl-2蛋白を発現しているクローンは得られなかった。追試にても同様の結果を得た。従って、bcl-2蛋白の存在はHBL-9にとって不都合な環境をもたらす可能性が示唆され、HBL-9のapoptosisにおけるbcl-2蛋白の意義を考察する上で興味深い結果が得られた。
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