研究概要 |
節外性リンパ腫の診断は反応性のリンパ球,間質,および上皮などの混在のため形態学のみでは困難なことが多く,より客観的で正確な診断法が求められている.われわれは小さな生検標本を用いてIgHgeneにおけるrearrangementのPCR解析を行い,多くの胃悪性リンパ腫で分子生物学的診断が可能であることを報告した(Diagn Mol Pathol,4;32-38,1995).本年度はB細胞性リンパ腫に加え,T細胞性リンパ腫のPCR診断手技を確立するとともにこの分子生物学的手法を臨床診断への応用を試みてきたが,形態学とPCR解析の結果が一致しない症例がいくつか認められた.そのなかにリンパ腫様の組織形態を示す胃梅毒と判明した症例を認めたのでこれを第84回日本病理学会(平成7年4月)で発表した.またHuman Pathology誌上に報告予定である(印刷中).このような組織形態を示す胃梅毒は今までに報告がないため以下の2点の証明が必要であった.(1)浸潤しているリンパ球に関しては免疫組織染色とPCR法によりmonoclonalityを証明できず腫瘍的性格を否定し,反応性病変と結論した.(2)蛍光抗体法およびPCR法により胃組織内にトレポネ-マを証明した.従来から用いられている蛍光抗体法は感度が低く,トレポネ-マの検出率は十分ではなかったが,PCR法は非常に感度の高い検査法であり,その特異性に関してもPCR産物を直接シークエンスを行い確認した.以上により胃リンパ腫の鑑別診断として,胃梅毒を考慮する必要があることが証明された.
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