研究概要 |
成人IgA腎症の腎生検標本980例のうち、光顕標本中に糸球体を10個以上含み,かつ電顕標本においても硬化のない糸球体を2個以上含む症例200例を測定した。光顕標本で輸入動脈の外径および内径をコンピューター画像解析ソフトを用い測定し,また動脈壁の硝子様変性の程度をgradingした。さらに糸球体外径のtracingにより1症例あたりの平均糸球体面積を測定しその体積を算出した。各症例について,糸球体の不可逆的な硬化性病変,すなはち膠原線維の増生により,糸球体内毛細血管が閉塞に陥った病変を半定量化し,糸球体硬化指数として各症例を0-5にgradingした。電顕標本からは各症例から2-4個の糸球体を全域(1000倍)で撮影しpoint-countingによるstereological methodを用いメサンギウム領域,係蹄内腔野fractional volume,さらに濾過表面積(係蹄自由画)のsurface density,単位体積当たりのcapillary length densityを測定中である。以上の検索により現時点における結果として1)糸球体硬化の進展に伴い,残存糸球体は濾過表面積の拡大および糸球体係蹄の延長により代償性の肥大を示す。2)輸入動脈の閉塞度は慢性高血圧の有無と相関し,また輸入動脈の閉塞度と血圧をcombineさせると,糸球体代償性肥大の程度ならびに糸球体の硬化性病変に相関することから,輸入動脈のautoregulationの低下に慢性高血圧が加わることにより,糸球体内の血行動態の障害を惹起し糸球体荒廃へ至ることが予測できる。今後は糸球体の代償性変化がいかに不可逆的病変に結びつくのかを検討すべく,上皮細胞および糸球体基底膜障害についても症例を増やして検索する予定である。
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