研究概要 |
ストレプトゾトシン(STZ)誘発糖尿病ラットではSTZ注射により誘発されるサイトカインなどが膵B細胞を破壊してゆくと考えられている。この際フリーラジカルの発生が細胞破壊機構に深く関与していると考えられているが、生体内におけるフリーラジカルの検出は十分行われていない。本年度の研究ではSTZ誘発糖尿病ラットについて、STZ注射後早期の膵B細胞におけるフリーラジカルの発生、B細胞の形態学的変化についてレーザー顕微鏡を用いて検討した。生後8週齢の雄性Wistarラットにストレプトゾトシン(STZ)40mg/kgを注射し、STZ注射前、注射後2,8,24時間後に膵臓をフリーラジカルにより蛍光を発するdichlorofluorescein diacetate (DCFH-DA)を含むリンゲル液で灌流した後、膵臓のパラフィン包埋標本を作製した。膵ラ氏島はSTZ注射後2時間には特に変化を認めないものの、8時間後には核の腫大、細胞の膨化などが認められた。またレーザー顕微鏡による観察では、STZ注射2時間後にはDCFH-DAの蛍光を認めなかったものの、8時間後には膵B細胞の細胞質内に蛍光の増強を認め、STZ注射によりB細胞内でフリーラジカルが過剰に生成していることを形態学的に観察し得た。STZ注射8時間後には一過性の低血糖が見られ、B細胞傷害に伴う脱顆粒により高インスリン血症をきたしていることが考えられた。レーザー顕微鏡を用いることにより、STZ注射後早期に膵B細胞内でフリーラジカルが生成していること、それに伴う形態学的変化、また機能障害を明らかにし得た。
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