研究概要 |
我々は、蛍光色素チオフラビンTを用いた分光蛍光定量法(Naiki et al.Anal.Biochem.177,244-249,1989)を応用し、βアミロイド線維定量法を確立した。 (a)合成アミロイドβ/A4蛋白質(β1-40,400μM)をpH7.5,37℃で3日間インキュベートし、βアミロイド線維(f(1-40))を作成した。電子顕微鏡を用いた形態学的観察により、典型的アミロイド線維を確認した。 (b)f(1-40)に結合したチオフラビンTの極大励起・蛍光波長は、各々446nm,490nmであった。 (c)チオフラビンT蛍光強度は溶液のpHに依存し、pH8.5付近で極大となった。 (d)10μg/mlのf(1-40)に対しチオフラビンT濃度を変化させ、蛍光強度の変化からScatchard plotを作成した。Kd値は約860nMであった。 (e)5μMのチオフラビンTに対しf(1-40)濃度を変化させた場合、蛍光強度は直線的に変化し、これよりf(1-40)定量のための標準曲線を作成した。 次に我々はその方法を応用し、f(1-40)の形成機構を反応速度論的に解析した。 (a)f(1-40)を超音波破砕後、β1-40と37度でインキュベートし、f(1-40)の伸長を、電顕を用いた形態的観察、及び分光蛍光法によりモニターした。 (b)反応会誌1時間後の電顕観察により、アミロイド線維長の増加を認めた。 (c)反応開始後蛍光はラグタイム無く増加し、やがて平衡に達した。反応開始後10分間は蛍光は直線的に増加した。従って反応開始10分後の蛍光量増加を重合初速度と見なし、以下の解析を行った。 (d)重合初速度はpH7.5付近で極大となり、15度から45度の間で反応温度に大きく依存した。 (e)見かけの伸長初速度は、f(1-40)の数濃度が一定の場合,重合速度Kon x[C]と脱重合速度Koffの和として表された(Kon、Koff:重合、脱重合の速度常数、[C]:β1-40濃度)。 以上より、f(1-40)の伸長は、一次の速度論、つまり既に存在する線維の端に、β1-40がstep by stepに結合し、立体構造を変化させることにより起こることを証明した。
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