研究概要 |
本研究の最終目的は、癌の遺伝子治療の際に見られるbystander効果の成立機序にギャップ結合細胞間コミュニケーションが関与しているか否かを明らかにすることであったが、そのためには、癌細胞がどのようなギャップ結合細胞間コニュニケーション能を有し、それが癌細胞の悪性度とどのように関係するかを解明することが重要と考え、ヒト食道癌細胞株とマウス表皮発癌モデルを用いて、癌細胞の悪性度とギャップ結合細胞間コミュニケーション能の関係を解析した。 1.ヒト食道癌細胞株とギャップ結合細胞間コミュニケーション能の関係 (1)検索したヒト食道癌細胞株の多くで、正常ヒト食道組織で発現しているギャップ結合蛋白のコネキシン26、43が、mRNA,蛋白レベルで著名に低下または消失していること、 (2)しかし、これらの食道癌細胞株のほとんどで、低いものが多いながらも、ギャップ結合細胞間コミュニケーション能が認められることを見いだした。 現在、Cx26,Cx43の発現がなく、GJICの低い食道癌細胞株へのCx43発現ベクターの導入を行ったクローンについてギャップ結合細胞間コミュニケーション能、ヌードマウスでの造腫瘍性の解析を行っている。 2.マウス表皮多段階発癌系におけるギャップ結合の変化 DMBAとTPAの塗布によってマウス表皮に前癌病変であるパピローマ及び扁平上皮癌を誘導し、 (1)扁平上皮癌では、正常表皮、papillomaに比べて、ギャップ結合が有意に減少しており、癌細胞の脱分化に伴って、ギャップ結合蛋白質(コネキシン26)の減少が見られること、 (2)癌の湿潤部位では、ギャップ結合の更なる減少が見られること、(3)リンパ節への転移部位では、癌細胞は、コネキシン43をほとんど発現していない一方、コネキシン26の発現が見られることを明らかにした(Carcinogenesis 16:1287-1297,1995)。
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