研究概要 |
川崎病剖検例の病理組織学的検索を続けると共に、これまで検討を加えてきているカンジダ菌体抽出物によるマウス系統的脈管炎発症モデルにおける起炎物質の解析を行った。 1.川崎病罹患児の糞便より分離されたCandida albicans(MCLS-6株)を液体培地にて37℃、72時間静置培養して得た菌体を洗浄後、水、熱水、0.001M,0.01M,0.1M,0.5M KOHの順で抽出を行った。抽出物は、いずれもGlucoseとして20〜70%の糖が含まれ、Mannoseが主体をなしていた。いずれも中性糖であり酸性糖およびアミノ糖は確認されなかった。水、熱水、0.1M KOH抽出物をマウスに投与したところ、全群でこれまでの検索と同様の組織像を呈する血管炎が発生した。この内、熱水抽出物をゲル濾過して得た物質(画分(A))は、β優位な結合を示し、Monnoseとして90%の糖を含有していた。構成糖はMannoseであった。箱守法によるメチル化分析の結果、1,5-di-O-acetyl-2,3,4,6-tetra-O-methly mannositol,1,2,5-tri-O-acetyl-3,4,6-tri-O-methyl mannositol,1,5,6-tri-O-acetyl-2,3,4-tri-O-methyl mannositiol,1,3,5-tri-O-acetyl-2,4,6-tri-O-methyl mannositol,1,2,5,6-tetra-O-acetyl-3,4-di-O-methyl mannositol,1,3,5,6-tetra-O-acetyl-2,4-O-di-methyl mannositolが検出された。画分(A)をマウスに接種しても従来と同様の脈管炎が発生した。 2.マウス腹腔内マクロファージを採取し1×10^5個になるように96穴プレートに播種。培養上清に同抽出物を添加後4時間のTNFα値をELISA法を用いて測定した。その結果、TNFα産生値は対照群に比して有意に高値を示した。 3.抗TNFα抗体を尾静脈から投与した後、菌体抽出物を腹腔内に接種しマウス血清TNFα産生値の経時的な変動をみた。対照群(抗体非投与群)では接種1〜3時間後をピークとするTNFα値の上昇がみられたが、抗TNFα投与群ではこのピークは抑制されていた。しかし、両群ともに脈管炎は発生し、その発生率にも差異を見いだせなかった。
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