研究概要 |
肝炎、肝硬変、肝癌患者におけるHCV genotypeとHCV RNA量の関連性の検討、及びinterferon効果との関連性を検討する目的で研究を施行した。現在までに解析する事ができた対象症例は、慢性肝炎50例、肝硬変15例、肝癌11例、合計76例である。genotypeはacid guanidinium thiocyanate-phenol-chloroform methodにてRNAを抽出し、cDNAに転写し、Okamoto等の型特異的プライマーを用いてnested PCRを施行して決定した。その結果、I型は2例、II型は55例、III型は15例、IV型は4例で、V型は認められなかった。この型分布はこれまで報告されてきた本邦の平均的な数値とほぼ同様である。HCV RNA量はtarget amplification methodではなくsignal amplificationによるbranched DNA method(bDNA法)にて測定した。bDNA法による測定限界以下の症例数の比率はI型50%、II型23.6%、III型46.7%、IV型0%、合計で27.6%であった。各genotype毎の血中HCV RNA量の平均値はI型0.60×1,000,000equivalent/ml(0.60MEq/ml)、II型6.67MEq/ml、III型6.11MEq/ml、IV型1.39MEq/mlであった。I,IV型は症例が少なく言及困難であるが、III型症例の半数近くが測定限界以下で、II型症例では大部分が測定限界以上の症例である結果と測定可能症例の測定値の結果よりII型症例のHCVRNA量が高い傾向にある事が判明し、II型症例のinterferonによる治療効果が低率である事と関連するものと考えられた。一方各臨床時期別のHCV RNA平均量は慢性肝炎7.94MEq/ml、肝硬変2.85MEq/ml、肝癌2.27MEq/mlで、肝硬変、肝癌における血中HCV RNA量は大差ないが、慢性肝炎より肝硬変に移行するとHCV RNA量に大きな変動がある。この傾向はMagrin等の報告と同様の傾向で、慢性肝疾患においては病変の進展と共にHCV RNA量が減少する可能性を示唆し、HCV RNA量の測定が疾患の評価に役立つ可能性が考えられた。
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