研究概要 |
以前の成績から,非好適宿主ではAcanthocheilonema viteae(Av)の第3期感染幼虫(L3)と1日令虫体が殺滅され易く,逆に好適宿主ではこのステージの虫体が生着・発育し易いことが分っている。そこで,Avの非好適宿主内での殺滅機構を検討することを目的として,感染局所の組織学検索を行うとともに,虫体殺滅へのマクロファージの関与の可能性を検討するために,主としてマクロファージから産生されるNOの感染局所での産生を調べた。BALB/c雄マウス(20匹)の後背部の体毛を除去し,1-1.5cm四方の枠を書く。そこに0.05-0.1mlの生食に浮遊させた80-100隻のL3を注射した。対照として生食のみ注射群を設けた。注射後2時間,2日,6日,13日に3-4匹ずつ放血,屠殺後,皮下織を含めて注射部位の皮膚を切除し,半分を組織学的検査用に固定した。残りの半分はRPMI1640medium中で培養し,15分,30分,1時間後に上清を回収し,NOanalyzerで上清中のNO_2^-を測定した。一方,マクロファージの活性化状況を調べるため,細切した肺や脾細胞をL3(40-50隻)で刺激し,得られた培養上清や血漿を用いてNO_2^-の測定を行った。感染マウスの組織学的所見では,感染2時間後に好中球を主とする皮下織の細胞浸潤が見られ,2日後には単核球(Mφ)が主体となり,好酸球も混在するのが認められた。6日後には血管の拡張が著しく,細胞浸潤はピークとなり,Mφと好酸球の著明な浸潤が認められ,所々に両細胞の集簇が見られた。また,完全なまたは部分的な脱顆粒像を示す肥満細胞が皮下織に認められた。13日後には6日後と比べ,細胞浸潤が終息したようにみられたが,リンパ球の集簇は未だ散見され,中には広範囲に亘る好酸球浸潤を認めるものもあった。感染局所の皮膚や血漿中のNO産生には変化は認められなかったが,感染マウス脾細胞では13日に有意なNO産生を認めた。皮下織に浸潤するMφからのNO産生を効果的に検出するためには,今後,方法論の改善が必要であると考えられた。
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