研究概要 |
Bordetella bronchiseptica壊死毒(DNT)の二種のトリプシン消化断片(60kDaおよび90kDa)のN末端側アミノ酸配列を自動アミノ酸シークエンサーで決定し、得られたアミノ酸配列に基づいてプローブを合成した。このプローブで、種々の制限酵素で消化したB.bronchisepticaの染色体DNAをサザーンブロットし、陽性反応の得られたBamHI,Apal,BamHi-Apal消化DNA断片を用いて部分ライブラリーを作製した。このライブラリーを前記の合成DNAプローブを用いてスクリーニングを行い壊死毒遺伝子をクローニングし、さらにその塩基配列を決定した。クローン化したDNT遺伝子を定法に従ってpET21発現ベクターに組み込み(pETDNTwt)、E.coli BL21(DE3)株に導入してE.coliのDNT発現系を作製した。pETDNTwtを導入したE.coliの菌体抽出液からは抗DNT IgGで中和される皮膚壊死活性が検出できた。 B.bronchiseptica DNTをコードするDNAの塩基配列からDNTの全アミノ酸配列を推定したところ、DNTは1,464アミノ酸残基からなり、その分子量は160,602であることがわかった。既に報告されたB.pertussisのDNTとアミノ酸配列を比較したところ、両者には97.95%の相同性が認められた。アミノ酸配列のモチーフ検索をしたところ、B.pertussis DNTと同様にB.bronchiseptica DNTにおいてもC末端側にP-loopと呼ばれるATP/GTP結合モチーフが存在することがわかった。またDNTと同じく、Rhoを標的分子にもつ大腸菌のCNF2ともC末端側において35%程度類似性のあることが確認できた。以上の結果からDNT分子のC末端側に活性ドメイン、すなわちRhoと反応する部位が存在する事が考えられる。
|