研究概要 |
毒素原性大腸菌の産生する耐熱性エンテロトキシン(STa)は、腸管上皮細胞膜上に存在する受容体蛋白質(STaR)に特異的に結合して、ヒトや家畜に急性の下痢を引き起こす毒素である。本研究において、STaRへのSTa結合に重要な部位の機能を明らかにする目的で、第一に膜結合型グアニル酸シクラーゼ・ファミリーの約400残基からなる細胞外領域のアミノ酸配列のマルチプル・アラインメントを行なった結果、13種類の受容体すべてに保存されている6残基のアミノ酸が認められた。ブタSTaRのアミノ酸では、Cys72,Gly98,Pro99,Cys101,Asp347,Asp351の6残基のアミノ酸である。さらに比較的よく保存されているアミノ酸Tyr103,Gly350を考慮に入れ、膜結合型グアニル酸シクラーゼ・ファミリーの細胞外領域の共通なモチーフとして、N末端近くにGPモチーフ(CX20-25GPXCXY or CX20-25GPXXXCXY)が、細胞膜近くにDXXGDモチーフがあることがわかった。 第二に膜結合型グアニル酸シクラーゼ・ファミリーの細胞外領域に存在するDXXGDモチーフの機能を調べる為に、ブタSTaRのDNCGD(アミノ酸347-351)のアミノ酸残基をアラニン・スキャンニングした。いずれのSTaR変異体も免疫沈降により蛋白質の発現を確認したが、DXXGDモチーフに保存されたアミノ酸残基(D,G,D)をアラニンに置換したSTaR変異体は、STa結合活性とcGMP形成能を示さなかった。従って、膜結合型グアニル酸シクラーゼ・ファミリーのDXXGDモチーフは、リガンドの結合およびグアニル酸シクラーゼ領域の活性化に重要な部位であると考えられた。
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