C3H/HeJマウスは、リポ多糖(LPS)に著しく低応答性であり、このマウスのLPS低応答性に関わる変異分子は第4染色体上にコードされると考えられている。C3H/HeJマウスのLPS低応答性の機構解明および変異分子の同定を目的とし、C3H/HeJマウスの胎児線維芽細胞のLPS応答性を解析すると共に、その細胞株樹立を試みた。コントロールとして同系のC3H/Heマウスを用いた。 C3H/Heマウス由来の胎児繊維芽細胞は、LPSに応答し、インターロイキン-6(IL-6)を産生した。その産生量はチオグリコレート培地で誘導した同マウスの腹腔マクロファージに比べ低かったが、1ng/ml程度の低濃度のLPSにも応答し、IL-6を産生した。一方、C3H/HeJマウス由来の胎児線維芽細胞は、低濃度のLPS刺激ではIL-6を産生せず、LPSに著しく低応答性であった。高濃度のLPOS刺激(1μg/ml以上)では、C3H/HeJマウス由来線維芽細胞でもIL-6を産生した。これは、再精製したLPSでも認められたので、IL-6の産生性に起因するものと考えられた。両線維芽細胞に複製開始点を欠くSV40ウイルスDNAをを導入し、細胞株を樹立した。これらの細胞株は、初代培養線維芽細胞に比べIL-6の産生性は幾分落ちるものの、ほど同様のLPS応答性を示した。樹立された細胞株は、マクロファージにおけるLPS/LPS結合タンパク質のレセプターであるCD14分子に対するmRNAを発現しておらず、膜結合型CD14に依存しないLPS認識機構の存在が推定された。また、^<125>Iで標識したLPSを用いてLPSの結合能を両細胞株で調べたが、差は認められなかった。従って、C3H/HeJマウスの変異分子はLPSの結合以降に位置すると考えられた。C3H/HeJマウスの変異分子の同定およびLPSのシグナル伝達系の解析に有用であると考えられる細胞株が樹立された。
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