研究概要 |
IL-2のシグナル伝達に選択的に共役する二次メッセンジャー系および標的遺伝子の同定を目的として,以下の実験を行った. 【1】IL-2刺激により活性化する細胞内シグナル伝達遺伝子の解析 種々の細胞をIL-2刺激後可溶化し,抗リン酸化チロシン抗体を用いたウエスタン法により,IL-2依存性にチロシンリン酸化をうける細胞内基質を探索した.その結果,ヒトNK様細胞YTSおよびIL-2レセプターβ鎖(IL-2Rβ)を導入したBAF/B03細胞では,IL-2刺激依存的にpp100が共通なリン酸化基質として検出されたが,これまでのところIL-2Rβトランスジェニックマウス由来細胞で同様な結果は得られていない. 【2】IL-2刺激に応答する標的遺伝子単離の試み IL-2刺激に対する標的遺伝子を同定するためには,IL-2刺激前後の遺伝子発現の変化を高感度で検出できる実験系が必要である.この目的のため,Okuboらの方法に準じて3′末端特異的cDNAライブラリを作製し,ライブラリのシークエンス解析およびデータベース検索を行っている.本方法でクローニングされるcDNAは3′末端の約250bpを含み,mRNA分子種を区別するに十分な情報を持つ.また,標的遺伝子は出現頻度の変化として同定できる.現在までのところ,IL-2刺激した細胞由来ライブラリの解析には至っていないが,未刺激T細胞由来ライブラリを約400クロン解析した結果,複数の新規遺伝子の候補を得ている.今後IL-2刺激依存性に発現誘導される遺伝子群の同定を行いたい.
|