本研究では、産業化学物質の皮膚感作性の評価における両サイトカイン解析の有用性を検討しするために、Balb/cマウスに皮膚感作性物質と皮膚刺激物質を各々塗布し、その後の幾つかの時点で皮膚におけるIL-10とIL-12のmRNAについてRT-PCR法を用いて解析したところ、幾つかの新たな知見が得られた。まず、皮膚感作性物質である塩化ピクリルトおよび皮膚刺激であるSDSを用いて、マウスを感作し、その皮膚のmRNA発現を検討した。その結果、SDSは皮膚のIL-10・IL-12のmRNA発現にほとんど影響しなかったのに対し、塩化ピクリルトは両サイトカインのmRNAsを有意に誘導し、その誘導が皮膚塗布後の12時間にピークに達した。また、5%塩化ピクリルトで処理したマウスの皮膚では、そのIL-10・IL-12のmRNA発現が2.5%処理群より強かったことをも認めた。すなわち、皮膚感作性物質による皮膚のIL-10・IL-12のmRNA発現が使用した皮膚感作性物質の濃度に依存することが分かった。さらに、皮膚感作性を持つ数種の産業化学物質(TDI、硫酸ニッケル、ホルマリン、DNCBとOXAZ)をマウスに塗布し、両サイトカインのmRNAを検討した。いずれの処理群においても、マウスの皮膚のIL-10とIL-12のmRNAが対照群に比べて有意に誘導されたことが見られた。以上の成績より、アレルギー性皮膚炎の感作段階では、そのマウスの皮膚におけるIL-10およびIL-12のmRNA解析は一つの新たな産業化学物質の皮膚感作性の手法になるだろうと示唆している。
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