ウィスターラットに塩化カドミウムを皮下注射で6ヵ月ならびに9ヵ月間にわたって投与し、おのおのの時点で末梢血、24時間尿、腎臓、等を採取し、慢性カドミウム中毒による貧血と腎臓障害との関連を調べた。その結果は以下のとおりである。 ・6ヵ月目、9ヵ月目ともに著明な貧血が観察された。 ・著明な貧血があるにも関わらず、末梢血中のエリスロポエチンの増加は見られなかった。 ・血漿鉄のレベルは低下し、総鉄結合能は上昇していた。 ・尿量の増加、尿中への低分子蛋白やアミノ酸の排泄の増加等、腎臓尿細管障害を示す所見が得られた。 ・9ヵ月目のラットの腎臓病理標本では尿細管の萎縮、変性、尿細管腔の拡大等が観察された。 ・腎におけるエスロポエテンmRNAの発現は、6ヵ月目のラットでは対照とはほぼ同じレベルにとどまっており。さらに9ヵ月目のラットではむしろその発現は低下していた。 以上の結果より、慢性カドミウム中毒で引き起こされる貧血には、鉄欠乏性貧血に加えて、腎臓障害による腎でのエリスロポエチンの発現の低下が重要な働きをしていることが明らかになった。現在のところ、これらの結果はすでに論文にまとめ、雑誌に投稿中である。
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