研究概要 |
聴覚の加齢現象に及ぼす騒音の影響を確認するために、通常の気導聴力の一過性聴力変動(TTS)の測定手法を応用して、騒音の実験的曝露による最高可聴閾の変動を観察し、以下の成績を得た。 1.通常の気導聴力のTTSを確認するために、Bekesy type audiometerを用いて、4kHzの試験音に対する聴力レベルの変動を、遮音室内にて100dB、10分間の白色雑音(20Hz〜20kHz)の曝露後に測定した。曝露後2分のTTSは、平均16.3dBであり、諸家の成績と矛盾しなかったが、その分布は1〜19dBで、被験者の感受性に大きな個体差がみられた。 2.最高可聴閾の測定は、当教室が製作した自記式最高可聴閾測定装置を使用して、4kHzの場合と同じ条件下で一過性変動の測定を行った。白色雑音の場合、曝露後2分では平均-0.9kHzであったが、-2.9〜+0.3kHzと大きなバラツキがあり、4kHzの場合と同様に個人の感受性に違いがみられた。なお、再現性を検討した結果、同一条件ではほぼ同じ値が得られると考えられた。また、10kHz〜20kHzの高周波曝露の条件下で一過性変動を測定したが、白色雑音の曝露と同じ結果で、有意差は認められなかった。 3.曝露音圧が80,90dBの場合には、最高可聴閾の一過性変動はほとんど見られなかった。100,110dBの場合は、曝露後2分でともに平均-0.9kHzの一過性変動がみられた。 以上の成績から、騒音の曝露量と最高可聴閾の一過性変動との間に量・反応関係がある可能性が示唆された。今後、low pass filterを用いて低周波曝露の影響を合わせて検討し、最高可聴閾のTTSの量・反応関係について立証することが必要であろう。
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