研究概要 |
【目的】本研究はチトクロムP450酵素群遺伝子多型およびグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST1)遺伝子多型が喫煙者に対してその細胞感受性に違いが見られるか否かを明かにすることを目的としている。 【対象と方法】対象は40歳から50歳代の喫煙者でCYP1A1遺伝子多型がすでにわかっている4名であり、静脈血を全血培養法によってベンツピレンによる姉妹染色分体交換(Sister Chromatid Exchange; SCE)の誘発に関する検討を行なった。培養液としてfetal bovine serum 15%,antibiotics 1%,40μM BUdRを含むRPMI 1640培養液を作成し、5mlずつ培養用チューブに分注した。SCE誘発のためにベンツピレン(C_<20>H_<12>)をDMSOを溶媒として溶かし、最終濃度が1μM,10μMになるように各培養液に添加した。無添加のものとDMSOを添加したものを対照とした。培養は分注した培養液に血液0.3mlと上記の濃度になるようにベンツピレンを添加し、PHAを加え,37℃,CO^2濃度5%のインキュベータ-中で72時間培養を行なった。培養終了4時間前に最終濃度が0.2μg/mlになるようにコレセミドを添加した。培養終了後、0.075M KClで10分低張後、エタノール:酢酸=3:1の固定液で固定し、染色体標本を作成し、姉妹染色分体の分染をFPG法によって行なった。各群25細胞についてSCEの頻度を調べた。 【結果】SCEの頻度は遺伝子型がIIe/IIe、IIe/Val、Val/Valのときベンツピレン濃度が0μMとするとそれぞれ10.4±4.4、11.6±5.7、8.8±3.9であった。ベンツピレンが1μMのときはそれぞれ12.4±6.1、16.4±10.2、9.5±2.6であり、ベンツピレン濃度が10μMのときそれぞれ14.9±7.8、17.4±7.3、14.5±5.3となった。このように各遺伝子型においてもベンツピレンの濃度が高くなるとSCEの頻度は高くなったが、遺伝子型による差は認められなかった。今後はGST1遺伝子多型も加味して、さらに、対象を増やして検討する必要がある。
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