研究概要 |
閉経前後の女性を対象とした骨密度測定を実施し、骨密度関連指標(Speed of sound : SOS,broadband ultrasound attenuation : BUA,stiffness index : SI)の決定要因としての性ホルモン(estradiol : E2,free testosterone : free T,dehydroepiandrosterone-sulfate : DHEA-S,sex hormone binding globulin : SHBG)の貢献度を中心に、年齢、形態指標(body mass index : BMI,体脂肪率:%fat,ウエスト周囲径とヒップの比:WHR)、栄養摂取量の貢献度を、ステップワイズ重回帰分析を用いて検討した。測定参加者は超音波法による踵骨の測定に自ら応募した某町の住民68名であり、骨代謝や性ホルモンに影響を及ぼす可能性のある薬を服用したことのある者、および閉経の有無が不確実な者を除き、有経群16名(38-50才)および閉経群28名(47-86才)を対象に解析を実施した。 有経群では、動物性脂肪摂取量は、SOS,SIとの間に独立した正の関連を有し、ビタミンB2摂取量はBUAとの間に有意な正の関連を有しており、骨密度の保持には、動物性脂肪や補酵素であるビタミンの摂取が関与している事が示唆された。また血中DHEAS濃度はBUAとの間に有意な負の関連を有していた。糖・脂質代謝または冠動脈疾患との関連において、DHEASAは、閉経後女性では女性ホルモン様作用を有するが、閉経前女性では男性ホルモン様作用を有することが報告されている。本研究では、有経女性における骨密度に対して、DHEASが男性ホルモン様作用を発現し骨密度の維持に抑制的に作用する可能性が新たに示唆された。 閉経群では、各性ホルモンや栄養摂取量とは独立して、年齢とBMI(または%fat)が、各骨密度指標の有意な独立変数として採択された。これまでにも体重は物理的負荷として骨密度の増加に関与すること、また体脂肪組織において、テストステロンが、骨吸収を抑制する作用のあるエストロジェンに芳香化されることが報告されており、この成績もそれらを支持する結果であった。閉経後女性では、E2やDHEASと骨密度との正の関連が報告されている。本研究では単相関分析では有意な関連が認められたものの、重回帰分析では認められなかった。性ホルモンは年齢の影響を強く受けていたため、独立変数として採択されなかったと推測された。
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